【シリーズ:海外で使える豆知識④】たった2ドルのチップでまさかの事態に⁉

「チップ文化」と言えば海外では当たり前ですが、日本ではなじみが薄い分、いつどこでいくら払ったらよいか、なんとなくしか知らない人も多いのではないでしょうか。

弊学院の授業では、生徒たちが自分で海外に行った時に困らないよう、あるいは英検の過去問で出題されたことも踏まえて、チップの歴史から払い方などの一般常識まで広く講義をすることがあります。まさに学校や一般学習塾では学べない、アメリカで実体験をしてきたからこそ伝えられる話しで好評です。

その中でも、絶対に渡さなければならないところで渡さなかったらどうなるのか。これに関しては私自身「まさかそんなことになるとは」という恐怖体験があります。

あれはアメリカ在住歴3年目の冬休みを利用して、年末年始をはさんだ3週間ニューヨークに滞在していたその最終日のことでした。

私は自分が住んでいるミネソタ州まで40時間の長距離バスで帰路につくため、お見送りをしたばかりの空港から少し離れたバス停まで移動をしなければならず、ふと、1度も乗らなかったNYの有名なイエローキャブを利用しようと思い立ちました。

毎日歩いたマンハッタンの街もこれで見納め。道は相変わらずどこも混んでいましたが、その分ゆっくり窓の外を眺めることができたものです。

さて、目的地に到着したとき金額は約18ドルくらいでした。私は20ドル紙幣で支払いをしたのですが、ドライバーはおつりを用意する仕草を見せません。スキンヘッドの大柄の黒人の方でした。

「またか…」

日本人にとっては信じられないかもしれませんが、例えばスーパーで買い物をしたときでも

細かいおつり(特に小銭)はアメリカでは返ってこないことがよくあります。

「おつりをください」と言うと「え、小銭までいるの?めんどくさ」という感じのいやな顔をされるのです。大都市のきちんとした場所ではそうでもないかもしれませんが、田舎だと日常茶飯事です。

一瞬、「チップ込みで渡したと思っているのかもしれない」とも思いましたが、チップはチップ、おつりはおつり、きちんとしたいし・してほしいと考えてしまうあたりがやはり自分は日本人だなと感じつつ、やはり言ってしまうのです。

「おつりをちょうだい」

すると案の定、驚いた顔をされました。あからさまに威嚇的な物腰で「なんだって?チップ込みだろ?」と。もう、何を頭のおかしいことを言ってるんだこいつは、くらいの圧を出してきます。

ああ、やっぱりなと思いましたが、「俺はおつりが要るんだ。チップはそのあと渡す」と、客観的にみると非常に無駄なお金の行き来なのですが、そういう感じでこられたのでこっちも態度を硬化させていてなんとなく引き下がれなくなっていたのですね。

するとそのドライバーさんは「意味が分からない」という表情で不満をあらわにしながら1ドル紙幣を雑に2枚つかんで後部座席へ投げ捨てるように渡してきたのです。態度悪すぎです。

これには普段とっても優しい私もさすがに少しだけカチンときましたので、落ちたお金を拾うとドアを蹴飛ばすようにして開けてチップを渡さず出て行ってやりました。

ところがです、その黒人さんも運転席から出てくるではないですか。そして放送禁止用語を連発しながら、こんなにか弱い日本人に対して怒鳴りながらこっちに向かって猛突進してきたのです。

これは怖い。シンプルにぎょっとしました。体格でかなうはずがありません。つかまったら一貫のおしまいです。どんな目に合うか。やばいことになったと、私もスーツケースを担いで一目散に逃げだしました。

たまたまそのドライバーさんが大柄であまりにも体が重すぎたためか、あまり長い距離追われることもなく無事危機を脱出しましたが、「たった2ドル程度のチップでそんなに怒らなくても」と思うのはまだまだ文化の違いへの理解不足で未熟でした。

彼らは、職業によってはチップで生計を立てている人も大勢います。一つ一つは大きな額ではなくても、実際にそれで生活をしている人たちにとっては死活問題になる事もあるため、本当に必死なんですね。命がけだからこそ、きちんと払わなければならないところで払わないと生命や財産を脅かされかねないことだってありうるということです。

よっぽどサービスに問題があるなどの例外を除いて、ホテル・タクシー・レストランなど決まっているところではチップは必ず払いましょう。

このような実体験から日本人にはわかりずらい、彼らにとってのチップの重みが少しでも伝われば幸いです。

熊本ザ・グローバル学院
学院長 糸岡天童