<第25回:「財布をなくした」を英語で言っても、それじゃ誰も驚きません>
早いもので、次回の英検1次試験まで1ヶ月を切りました。
各級を受検される皆さんのギアも上げなければいけない時期ですね。
弊学院でもライティングやリスニングなど、
より実践的な内容にシフトをしているところです。
さて、英検直前に確実に押さえておきたいのは
「日本語と英語の違いすぎる○○」のうち、
やはり文の基本にして世界ルールである「文法」と言うことになりますが
前回に引き続き、「現在完了」についてみていきましょう。
例えば、海外出身の人たちと食事をしに行った際、
せっかくだからご馳走してあげようと思ったにもかかわらず、
いざお支払いの時に自分の財布が見つからなかったら、
当然あせりますよね。
探しても探しても見つからなければ、皆にこう言わざるを得ません。
「財布をなくした!!」
問題は、これをどのように英語で表現するかです。
普通に考えれば多くの人は
“I lost my wallet.”
と訳すでしょう。
すると、外国人のうちの一人はきっと驚くこともなく
“When?”
と冷静に聞いてくるはずです。
なぜでしょうか?
“I lost my wallet. (私は財布をなくしました)”は、過去形です。
過去形はもちろん、「過去にそういうことがあった、やった」という表現であり、
済んだこと、終わったことに用いますので、直接現在は関係しません。
ですので、ネイティブからすると、その終わった話とは
“Yesterday? A week ago? Or, 10 years ago???”
「一体いつの話なんだい?」と不思議な感じがしてしまうのです。
だいたい「今なくしている」という状況は想像すらしません。
「今ない」なんていうのは、まさかというレベルです。
ところが、このシチュエーションでは「今なくしている」わけですから、
現在の形で言わなければならないということです。
ただし、
“I lose my wallet.”という現在形で表現すれば
「私は(いつも、よく、ふだん、決まって)自分の財布をなくします」
という、ただの注意不足の人のようになってしまいますし
“I am losing my wallet.”と現在進行形にすれば
訳の上では「私は財布をなくしているところです」となるので
一見おかしくなさそうですが、「なくす」という動作をしている最中なため、
川や崖下にむかって財布を投げて「なくしている」
意味不明な行動をとっている人になってしまうのです。
そこで
“I have lost my wallet.”と現在完了にすると
訳の上では「私は財布をなくしました」となる一方、
「今なくしている」ということになりますし、いつかはっきりしないにせよ
その前からなくなっていたんだな、ということが完璧に伝わるのです。
同じ「現在」が付く3つの形ですが、
それぞれの違いがなんとなく伝わったでしょうか?
自分の使っている言語に相対する文法がないということは
かくもわかりずらいものではありますが、他の形と比較して
なにが違うのかを明確にしていくことがとても大事である好例といえますね。
熊本ザ・グローバル学院
学院長 糸岡天童