<第63回:【海外で使える豆知識①】アメリカ人は謝らないがI’m sorryを良く使う!?>

さて、今回から

【海外で使える豆知識】シリーズ

をお届けしていきたいと思います。不定期ではありますが、前回の実体験コラムがおかげさまで非常に好評でしたので、そのショートバージョンとして、海外に行ったらぜひ知っておきたい異文化、決して言ってはならないNGワード、やってしまうと危険な行為、いざという時のための備えや、万が一が起こってしまった時の対処法など

学校や塾では絶対に教わらない、生の海外や生きた英語

を、実際にあった出来事と重ねながらお話し、ちょっと勉強にもなる企画です。気楽なシリーズですので、是非お付き合いください。

初回は、有名な話ですが

「海外では“I’m sorry.”を言ってはいけない!」です。

まだジョージア州の語学学校に通っていた最初の頃、私はキャンパス内の寮に住んでいました。アメリカ南部の夏は、日本ほどの湿気はないものの日差しが非常に強く、当然のようにとても暑いです。

授業が終わり寮に戻ってきた時、私は自分の部屋のある2階の廊下がやけに騒がしいことに気づきました。

階段の踊り場に差し掛かり残り半分を上がろうとした時、見えたんですね。

廊下で「水風船キャッチボール」をしているやつが。

まぁ、彼らはどこまでも自由なので、それ自体はあまりに気にも留めなかったのですが、階段を登りきったその時です。

たまたまワイルドピッチをして狙いから大きく外れた直球が、こともあろうか私に直撃したのです!

振り返り際に顔面にぶつかった水風船は見事に破裂し、頭から教科書の入ったカバンから全身ずぶ濡れになった私は、一瞬何が起こったのか分からず固まりました。

すると

“Ohooooooo, hohooooooo!!”

と、ピッチャーの黒人が大爆笑し始めたのです。

そこに立ちすくんでいた私は次第にふつふつと怒りがわいてくるのを覚え、沸点に達すると同時に爆発しました。

“F○○○ You!!!!”
(↑ もちろんこれも絶対ダメですが!! 過去にたった1回だけ使ったのがこの時です)

カバンを投げ捨て猛然と走り出そうとした瞬間、後ろにいたもう一人の、水風船を投げていない側の黒人があわてて止めに入ってきて、言ったのです。

“It’s our fault. It’s our fault, man.”

直訳風で言うなら「俺たちの過ちだ」。つまり「俺たちが悪かった」ということですが、“fault”には「責任」という意味がある一方、実際は責任を負わない時の謝り方なんです。

ここでもし“I’m sorry.”と言ってしまうと、

それこそ訴訟大国のアメリカでは、「全ての過失が自分にあることを認め、賠償を含め全責任を負う」

ことになってしまいます。

もしこれが交通事故などであれば、“I’m sorry.”は最悪のフレーズです。「10:0」で自分が悪いと認めたことになってしまう、恐ろしいパワーワードなのです。

とかく日本人はすぐに「すみません」と言いがちですが、海外では自分にも多少非があろうと良心がとがめようと、うっかりだろうとなんだろうと、そんなことは一切関係なく

“I’m sorry”は原則、安易に口にしてはならない。使い方要注意な言葉なのです。

もちろん例外はあります。家族や特に親しい友人、お店のクレームに対する定型文的使い方、自分が責任が取れる範囲の軽微な内容などに対してです。それも日常では“Sorry.”と軽めで済ませるか、形式上謝って見せるならやはり“It’s my fault.”です。

“I’m sorry.”はそれほどまでに重いということです。

ところがおもしろいことに

誰かに不幸な・残念な出来事あったと聞いた時にも“I’m sorry”は使えるんですね。

・身うちの人がなくなったと聞いたら→“I’m sorry to hear that.”「ご愁傷様です」

・恋人と別れたと聞いたら→“I’m sorry to hear that.”「それは残念だったね」

・大けがをしてしまったと聞いたら→“I’m sorry hear that”「お気の毒に」

つまり、謝罪表現以上に

“I’m sorry”は「哀れみや、悲しみの共有」として、広く一般的に用いられている表現でもあるのです。

ちなみに、水風船ぶつけて大笑いしていた失礼な黒人は、私が矛を収めて部屋に戻ろうとすれ違う際に、しっかり言ってくれましたよ。

“My fault, bro!”(悪かったな、兄弟!)、ってね (笑)

熊本ザ・グローバル学院
学院長 糸岡天童