<第73回:「お坊ちゃまくん」はギャグ漫画。本物のピカソを見習った英語学習をしよう!>

もう今の中高生といわず20代の若い人でもすでに知らないでしょうが、昔「お坊ちゃまくん」というギャグ漫画がありました。

まだ学習塾も今ほどは多くない時代。私が小学校の時に、通信教材「進研ゼミ」の毎月のテストで満点を取ると送られてくる図書券400円分を握りしめ、「コロコロ コミック」を買っては読んでいました。

満点を取れないと買えませんでしたので、漫画ほしさに結構がんばっていたものです(笑)

豪邸に住み、カメに乗り、口癖の「〇〇ぶぁい」「〇〇でしゅ」を語尾に付けながらお下品なギャグを連発し、毎回はちゃめちゃなドタバタ劇が繰り広げられる「お坊ちゃまくん」…思えば当時よくテレビでも放送されていたものだと、いまとは隔世の感があります。

さて、そんな「お坊ちゃまくん」ですが、あるとても印象深い回がありました。
「天才画家 茶魔の巻」というエピソードですが、こんな内容です。

「学園内人物画コンクール」に向けて図画の時間みんなで絵を描き始めるのですが、お坊ちゃまくんはデッサンがめちゃくちゃで下手くそでした。モデルになった許嫁の「沙麻代ちゃん」の機嫌も損ねてしまいます。一方で、おちぶれても元・上流階級の「貧ぼっちゃま」はプロ並みの腕前。そこでお坊ちゃまくんは、貧ぼっちゃまの家に遊びに行ったときにその絵を盗んで、自分の絵としてコンクールに出展してしまうのです。

これが大賞を取り「天才少年画家」として巷でも話題になり、とうとう世界的に有名な画伯がそのコンクールを見に来ることになると、会場で画伯は「おおーっ、すばらしい。感動した~~~っ。よし!この作品をルーブル美術展の日本代表作として持っていこう!」と大絶賛します。

そして「芸術だっ、この絵こそ21世紀のピカソだっ!」と手にしたのはなんと、お坊ちゃまくんがすり替えて貧ぼっちゃまの作品として飾られていた、あの最初の下手くそな絵の方だったのです。

お坊ちゃまくんは「そ…、それはほんとは、ぽっくんの絵ぶぁい!」「ほんとぶぁい、ほり、ほり!見てクリ~~。」と同じような下手な絵を描いてアピールしますが、もはや後の祭り。

上手に描けるけれども、わざときたなく描いていると思われてしまったのです。

これはギャグ漫画ですから、もちろんこんなことが現実で起こるはずはないのですが、ただ、ちなみに本物のピカソは実は極めてデッサン力が高い、というのは意外と知られていない事実です。

彼の写実画は文句なしに美しい。超高度な基本があるからこそ、あの「崩し」をしたときに質の高い美術品としての価値が生まれているのです。

もともと絵が下手くそな人が、たまたま晩年のピカソのような絵に似ていたからといって、残念ながら漫画のように「芸術だ!」とは決してならないですよね(笑)

要は、基本が大事。

ということです。

ピカソ15歳の時の作品

前回、「ドラゴン桜」「ハーバード大の脳科学者が実践する 図解 英語4技能アップ術」の2書をご紹介しました。

基本的には非常に勉強になる一読の価値のある同書ですが、リスニングにおいては「全部聞く必要はない」と述べている点に関しては、はっきり申し上げて、そんなことはありません。前回も、それではリスニングは伸びないと私は断言しております。

この詳細は、下記のリンクにある「【必見】リスニングアップのための超勉強法、大公開」もぜひご参照いただければと思いますが、リスニングに限らず、すべてにおいて基本に勝るものはないのです。

(「【必見】リスニングアップのための超勉強法、大公開」はコチラから→https://glogaku.com/2020/09/18/200918/

例えば長文読解法においても

・「ミクロ・リーディング(文の形や語彙語法、表現、文法を確認しながら正確に読む技法。基礎力アップに有効)

・「マクロ・リーディング(全体を素早く把握し、ピンポイントで正答を導く方法。読解速度が3倍になるなど、試験、特に共通テストなどに有効)

と2種類あるように、「マクロ」の方が手っ取り早く点数が取れるので魅力的に見える一方、やはり前提となるのは「ミクロ」な読み方ができることで、それなしに習得はできません。(この読解法についてはまたの機会に詳述しましょう)

弊学院では2級合格までは徹底して基礎力強化に時間をかけているのはこのためです。

強固な土台があれば、そのあとの応用はいくらでもできる。

一方で、基礎力もなく最初から「大雑把で良い」というのは、「大雑把」ですらなく「でたらめ」に近いため感心しません。少なくても学習をする姿勢としては好ましいとは言えない。

お坊ちゃまくんのエピソードのようなことは、英語においても現実世界では決して起きないからです。

そのような意味では、スラングを話せるとかっこいいと思っている人もいるようですが、それもまた「生兵法は大怪我の基」。相手をいたずらに不愉快にさせてしまう恐れのほうが大きい。

まずは簡単な英語でもいいのできちんとコミュニケーションを取れた方が、相手との友好関係・信頼関係も増しますし、そっちの方がかっこいいというものです。「なんちゃって」ほど見ていてダサいものはない。

英語でも、絵画でも、スポーツでもなんでも、出来る人こそ基本を大事にします。

茶道や歌舞伎、武道にも「守破離」という言葉がある通り、一丁目一番地は当然基本からしっかりと。

「全部聞く必要はない」。これは間違えで、時代や場面が変わろうとも、学習段階ではしっかり聞こえるようになるよう「すべて聞けるようになるための基本学習を繰り返す」。本番や会話では神経質になりすぎずに、臨機応変に。

これがやはり王道ですし、おススメです。

熊本ザ・グローバル学院
学院長 糸岡天童